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・介護保険支給限度額別枠 標準例超す利用可能に
市町村、難しい「制限」
平成12年1月25日 読売新聞より
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丹羽厚相が24日に諮問した介護保険の支給限度額案で、特別養護老人ホームなどに短期間入所する短期入所サービスの支給限度額をホームヘルパーの利用などの訪問・通所サービスの支給限度額の別枠としたことにより、制度上、厚生省が示している標準利用例を大幅に超える訪問・通所サービスの利用が可能になった。しかし、厚生省は、標準利用例を大幅に超えたサービス利用計画(ケアプラン)を意図的に作成した事業者に対しては、指定の取り消しを含めた指導を市町村に行わせるとしている。
介護保険では、利用者は介護支援専門員(ケアマネージャー)と相談し、支給限度額の範囲内でサービスを組み合わせたケアプランを作成するが、その際、ケアマネージャーは厚生省が示している標準利用例に沿ったプランを作ることになっている。
例えば、要介護5の高齢者が訪問介護を重視する場合、週に訪問介護を6回、巡回型訪問介護を14回、訪問看護を2回利用するほか、訪問リハビリを1回受けると想定。そのうえで、家族が旅行に出掛けたりする場合などで、特別養護老人ホームへの短期入所(ショートステイ)を月に1週間(半年に6週間)利用するとしている。これらの利用でかかる費用は、訪問介護分が月額27万6200円で、短期入所分は半年で49万2600円、1か月に換算すると8万2100円となる。
厚生省が今回、短期入所サービスの支給限度額を別枠としたのは、同一にした場合、要介護度が低い利用者にとっては、短期入所サービスをまとめて利用した月には、残りの日はほとんど訪問・通所サービスが受けられないというケースが生じるためだ。
例えば、要介護1の高齢者が、ある月に14日間の短期入所サービスをまとめて利用した場合、介護費用は13万8000円かかる。要介護1の支給限度額は16万5800円なので、残りの約2週間で2万7800円分の在宅・通所サービスしか受けられなくなる。このため、こうしたケースでも、標準的な在宅・通所サービスを受けられるよう配慮したものだ。
だが、その反面、標準例を超えるサービスの利用も制度上では可能になった。
例えば、要介護度5の場合、厚生省は従来、訪問サービスの月額27万6200円と短期入所サービスの同8万2100円を合わせた同35万8300円を、訪問・通所と短期入所合わせた支給限度額とする考え方だった。しかし、今回、訪問・通所だけで35万8300円を支給限度額としたことで、この利用者は制度上、毎月1週間短期入所を利用したうえで、残りの3週間で、35万8300円分の訪問・通所サービスを利用できることになる。
この結果、1ヶ月の費用は厚生省の想定より8万2100円多い44万400円となり、こうした利用が多くなれば、保険財政を膨らませ、市町村ごとに決める65歳以上の保険料に跳ね返ってくることになる。
厚生省は、こうした標準利用例を大幅に上回るサービス内容を繰り返すケアプランを作成した事業者に対しては、指定の取り消しも含めた指導を市町村に行わせるとしているが、これまでの福祉制度では、無料で手厚いサービスを提供してきた市町村も多い。そうした市町村で、高齢者自身が厚生省の標準利用例を上回るサービスを望んだ場合、それが可能となる制度でありながら制限することは、市町村にとって難しい判断となることも予想される。
<関連ニュース>
●1時間半超すと「家事援助中心」
厚生省は24日、介護保険で訪問介護サービスを提供した場合の介護報酬について、身体介護と家事援助、双方の折衷型の3種類の典型例とその区分けの目安をまとめ、医療保険福祉審議会介護給付費部会に示した。
身体介護の典型例としては
@体位変換や移動介助などの動作介護
A排泄、更衣介助などの身の回り介護
B入浴、食事介助などの生活介護
を挙げ、それ以外の掃除、洗濯、調理など日常生活の援助を家事援助とした。
実際の現場では、身体介護と家事援助が混在していることから、
@身の回りや生活介護を行い、残り時間を家事援助に充てる「身体介護中心」
A専ら家事援助だが、若干動作介護をする「家事援助中心」
B「身体介護中心」「家事援助中心」以外の中間的な「折衷」
と区分けすることとした。さらに、訪問時間が1時間半を超える場合、30分ごとの加算は、一番報酬単価が低い「家事援助中心」の単価を用いる考えを示した。
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