・ヒト21番染色体遺伝情報解読へ
 アルツハイマー病・白血病・ダウン症 難病治療に期待
 
平成12年1月10日 読売新聞より

理化学研究所など日本とドイツの国際共同研究グループは、9日、人間の遺伝情報が記録されている23対の染色体のうち21番目の解読が、来月中に終了するとの見通しを明らかにした。この染色体には、高齢者会を脅かすアルツハイマー病など数多くの難病に関係する遺伝子があり、こうした病気の原因究明や治療法の開発が加速するとの期待が高まっている。人間の遺伝情報は、日米欧の国際協力による「ヒトゲノム計画」で解読が進んでいる。このうち22番染色体は先月、解読が完了しており、21番目はそれに続く成果となる。

 研究陣は、日本側が、同研究所ゲノム科学総合研究センターの榊プロジェクトリーダー(東大医科学研究所教授)と、22番目の解読でも活躍した慶応大学医学部の清水教授たちの2グループ、ドイツ側が3グループ。1995年に着手し、染色体の中にあり、遺伝情報を記録している「塩基」と呼ばれる4種類の化合物の配列を、地道に解いてきた。

 人間の全遺伝情報は約30億個の塩基からなり、21番目には、その1.5%に当たる約5千万個が並ぶ。解読の対象は、遺伝子ではない部分などを除く約3400万個。日本側が全体の3分の2、ドイツ側が残りを担当した。

 作業はまもなく終わる見込みで、3月中に正式発表する。かなり短い染色体ながら、21番上には、計600−700種もの遺伝子があるらしいことなどが、判明しているという。

 今後、すでに21番上にあることがわかっているアルツハイマー病や白血病、ダウン症、てんかん、英国の物理学者ホーキング博士が発症した筋萎縮性側索硬化症といった難病の関連遺伝子とともに、詳しい解明が進むことになる。

 とりわけ、原因や治療法の研究が足踏みしているアルツハイマー病の解明には期待がかかる。21番上には、この病気と密接に関連した「アミロイド前駆体たんぱく(APP)」の遺伝子があるためだ。
 アルツハイマー病のうち「家族性」と呼ばれるタイプの患者は、この遺伝子の変異のため異常たんぱく質ができ、それが分解されて脳に蓄積する。しかし、この過程には、他の染色体に記録されている複数の遺伝子が絡んでいるとみられる。


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