・手が不自由でも着脱しやすいブラ開発

平成11年11月11日 読売新聞より

 リウマチや脳性まひなどで手が不自由な女性のためのブラジャーが、今月から発売された。東京都の情報などをもとに、下着メーカーのワコール(本社・京都市)が10年がかりで開発した。前ホックのものと、ホックなしでかぶるタイプの2種類あり、指を細かく動かせない人でも着脱しやすいのが特徴。高齢の女性の関心も集めそうだ。

 この商品は、着脱を助けるという意味で「着脱エイドブラ」と名付けられた。前ホック型は、指でつまむ力が弱い人でも着脱しやすいように、大きめのホックを胸の中央2ヶ所に取り付けてある。
 一方、かぶり型は、指を細かく動かすことが苦手な人でも着脱しやすいように、ホックは使っていない。かぶった時に、生地が丸まってしまわないよう、背中の部分に2ヶ所、弾力性がある樹脂の芯材を入れてある。いずれもカップの部分には通気性の良い素材を使い、安定感のある幅広の肩ひもを採用した。

 開発の端緒は10年以上前にさかのぼる。当時、東京都補装具研究所の研究員だった現東京都福祉機器総合センター展示相談係の岩波君代さんは、仕事柄、リウマチ友の会の会員や、各種の障害を持った人と接する機会が多かった。様々な補装具が開発されるなか、ブラジャーについては「下着のことなので言いづらくて」と、不便を我慢している女性が多いことに気付いた。
 「おしゃれしたくても、合うブラジャーがない、とか、介助されるのにも、ブラジャーを着けていないので恥ずかしい、といった声が多かったですね」(岩波さん)。たまたま使いやすいブラジャーに出合うと、大切に何年もぼろぼろになるまで使い続ける人もいたという。
 
 そこで、ワコールが都の情報などをもとに開発に着手。実際に障害を持つ女性をモニターにして、「弱い力で」「無理のない動きで」着脱できるものを目指した。フロントホックには、開閉が楽にできる授乳用ブラジャーのホックを応用した。
 また背中やアンダーバストの部分には手に力を込めなくてもいいように特に伸びのいい素材を使った。気分が前向きになるよう、機能一辺倒でなくレースなどおしゃれな要素も盛り込み、購入しやすいよう値段も通常の商品と同程度の3900円と4200円に抑えた。

 リウマチの患者は全国で60万〜70万人と言われ、女性の比率も高い。下着に悩む人は多いと見られる。
 また、患者でなくても「ブラジャー使用があたりまえになった1940年代生まれが60歳代にさしかかる」(同社)だけに、高齢者が使いやすい商品が求められることにもなりそう。

 同社の人間科学研究所主任研究員で、感覚・生理研究担当の藤井孝子さんは、「障害には個人差があるので、これが満足いく商品というわけではないが、今後もどんどん利用者の声を商品に反映させていきたい」と話している。 
 





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