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・介護保険「広域協力」 背景に財政難・人材不足
平成11年4月20日 読売新聞より
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介護保険制度の運用主体となる市区町村が今、近隣自治体とどこまで協力し合うかをめぐって判断が揺れている。財政内容の違いや施設整備状況のばらつき、医師、ケアマネージャなど介護認定や一線の介護を担う人材確保の格差。これらをどう克服し、協力の実をいかに挙げていくのか。広域化には事務効率化などの長所がある反面、個々の自治体の責任があいまいになる短所も指摘されている。全国最大規模の広域協力を目指す福岡県の実情報告と、読売新聞社の自治体アンケート結果から、広域化の現状と課題を探った。
読売新聞社の都道府県調査では、広域協力を目指す自治体は
@当面は要介護認定事務のみの広域化
A介護サービスから保険会計まで統一する完全一体化
の2種類で、76.1%の市区町村が少なくとも要介護認定での広域化を準備中だ。長野県諏訪地域のように、「制度開始後に完全一体化も予定」という例も多く、広域化は質、量ともに、さらに増える見通しだ。
福祉政策で連携する自治体グループ「福祉自治体ユニット」と都道府県対象のアンケート(複数回答)では、都道府県の7割強、ユニット市区町村の6割が広域化を肯定的にとらえている。
@事務の効率化
A保険料の不均衡解消
B保険財政の安定
が主な理由で、市区町村では「保険料の不均衡解消」が6割を超えた。
「財政基盤の弱い自治体が多く、会計統一は理想の形態」(三重県)、「離島や半島が多く広域対応が不可欠」(長崎県)などの理由で、県が完全一体化を推進しているケースもある。
しかし、広域化協議のすべてが順調なわけではなく、長崎県佐世保市と同市周辺町村との協議は、「介護施設などサービス基盤整備の格差が大き過ぎ、同一保険料でも同レベルのサービスを受けられない地域が出る」として難航。島根県でも、「介護保険を契機に市町村合併に持ち込まれかねない」と一部地域で反発が出ている。
アンケートでも、市区町村の3割強が「広域化は短所の方が多い」と回答。
@市町村の責任が不明確になる
A地域の実情を反映しにくい
B住民の制度改善要望などに機敏に応じにくい
などを理由にあげた。
一方、介護保険制度全体の不安として、都道府県では「要介護認定での混乱」、市区町村では「保険料介護とサービスのバランス」がトップ。低所得者対策や要介護認定の混乱、保険料徴収の不安、住民の理解不足などの指摘も多かった。
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