「民間企業の在宅介護ビジネス」
10月31日付読売新聞より

 昔から高齢者の介護を担ってきたのは、主にその家族たちだった。戦後、核家族化や女性の就業が進むにつれ、公的援助を受けた高齢者向け施設が整備されるようになってきた。だが、小子・高齢化が予想以上に進んだため、公的な施設介護だけでは、希望者を収容し切れなくなる心配も出てきた。財政面でも限界に近付いている。介護保険の導入もあり、改めて民間サービスを中心とした「在宅介護」が注目されるようになった。
 家族の負担をいかに軽くするか−その観点から、在宅介護サービスは需要の拡大が見込める。
 介護保険の対象は、寝たきり、痴ほうなどで介護を必要とする人が入居する老人保健施設などの「施設サービス」と、自宅療養する人にホームヘルプやディサービス、訪問入浴などを提供する「在宅サービス」に分かれる。
 介護が必要な人は、その程度に応じて限度額内でサービスを選択する。自己負担はかかった費用の一割で、あとは保険から支払われる。
 ニッセイ基礎研究所の推計によると、「寝たきり」「痴ほう」「虚弱」を合わせた介護を必要とする高齢者は、2000年で、266万人だが、ピークの2030年には、531万人に達する。日本の総人口は、2009年をピークに減り始めるが、介護を要する高齢者は「2030年まで増加することが明らか」という。
 厚生省は、2000年時点で見込まれる全国の高齢者介護の市場規模を4.2兆円と試算した。これに対し、ニッセイ基礎研は関連分野を含めて8.5兆円の市場規模になると推計する。在宅介護だけでも5.1兆円に上り、2040年には21.1兆円(在宅介護は10.8兆円)に膨らむ、とみている。
 ビジネスとしての難しさはあるが、日本経済にとって数少ない成長分野であることは間違いなさそうだ。  


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