超三極管接続-MX 6CK4 Push-Pull パワーアンプ

Super Triode Connection-MX 6CK4 Push-Pull Power Amplifier

目次

はじめに
製作方針
構成と動作の検討
回路構成
主要部品
製作
テストと調整
試聴結果
6AH4-GTとの差し替え


■はじめに

6AH4-GTの全段差動ツイン・モノラルアンプを作った後、さて、今年は何をやろうかというところです。

やっぱり、私としては、真空管アンプ然としたものより、半導体ミックスの方がやる気がでそうな感じです。 それと、今度は、はじめから負帰還を多めにかけることを前提としたアンプをやってみたい気もします。

そういうわけで、以前からちょっと気になっていた上條さんの超三極管接続と差動を組み合わせた回路ができないものかと思って、0dBアンプでお世話になった”UTiCdさん”の掲示板で相談したところ、参考になる回路があるということで紹介いただいたのが”かつさん”の「2A3超三極管接続−MX」です。 超三極管接続(以下超三結と略)というのは出力管を五極管でするものだとばっかり思っていた私には三極管の2A3で超三結というのが意外でした。(^^)

かつさんの詳しい解説を見てもすぐ理解できない回路でしたが、真空管アンプらしくない?設計感覚と、「だれでも作れる」と書いてある簡略化バージョンも発見したので、これを学習させていただくことにしました。 ちなみに、「超三極管接続−MX」というのは、超三結”モドキ”に”たすき掛け(クロス)”差動によるようです。  詳しくは、上記の「かつさん」の解説をご覧ください。

■製作方針

回路的には、6AH4-GT全段差動ツイン・モノラルアンプを改造できそうな感じもしましたが、同アンプは、私が初めてまともに作ったアンプなので手を付けずに置いておきたいのと、また、改造してしまうと聴き比べができないので新たに製作することにします。

ポイントは、半導体ウエイトを高め負帰還を積極的に使った回路が音質的にも期待できるのではないかと思うので、「超三結−MX」によって、それを確認することです。 また、これまでは、もっぱらモノラルだったのですが、今回は電源トランス1台でステレオ構成にしてみることにします。
1.回路は”かつさん”の「超三極管接続−MX」の簡略化バージョンを見本にさせていただく。

2.半導体ウエイトを高め、負帰還を大きくかけた真空管アンプの音質特性を確認する。

3.今回も、入門キットに負けないローコストレベルに収める。

■真空管と動作点の検討

とりあえず、どんな感じになるか候補の球を決めて、試しに動作ラインを引いて具体的に検討してみることにします。

全段差動と同じ6AH4-GTを出力管にすれば聴き比べできていいかなと思うのですが、同じ球ばかりやるのも何なので、値段も手頃で特性の似た6CK4−GTを試してみることにします。

<出力管>

最初は、出力段も差動にしょうかと思っていたのですが、ドライバ段の差動で出力管をドライブするMXでは、出力段差動は屋上屋を重ねる感があるのと、一度AB級というのもやってみたいので出力段は通常のプッシュプルのAB級にしてみることにしました。 下の図は、ぺるけさんのマニュアルにあった6CK4の特性図に8KΩの出力トランス(OPT)でのプッシュプルの一つの球当たりの4KΩの負荷ラインと二つの球の2KΩの合成ラインを引いてみたものです。 電源トランスの都合で電流量は押さえ気味にした設定ですが、動作点をプレート電圧(Ep)270V付近、プレート電流(Ip)32mA位、バイアス−33V位に置いたAB級動作です(図では10Wのラインを引いていますが6CK4の定格は12W)。

<電圧増幅管(帰還管)>

超三結の帰還管になるわけですが、超三結は真空管のプレートからグリッドへの従来のP−G帰還回路の帰還抵抗Rfを三極管に置き換えたもので、下の図Aのように入力電流がRfを通って出力電圧を規定するOPアンプ(オペアンプ=演算増幅器)回路のような動きに相当するようです。

真空管が抵抗と同等な働きをするというは不思議な感じがしますが、下の図Bのように三極管のカソードに入れた抵抗でグリッドにバイアスを与えた回路で、カソードに電流入力すると、カソード・プレート間に電圧が生じるという三極管の電圧増幅作用そのものが、電流が流れると電圧が生じるというV=I・Rの抵抗動作に等しいということのようです。 この使い方は、どっかで見たことがあるというか、真空管を二段に積み重ねるSRPP(シャント・レギュレーティッド・プッシュプル)の上側球の使いかたですね。 ただ、SRPPと違って、超三結の帰還管プレートは出力管プレートへの接続になります。

そういったことで、プレート電圧が最大になる時にプレート電流が多く流れる使い方になるので、最大定格が450V(5W)ある6SN7GTB(6SN7GT=定格300V、3.5Wの改良型)を候補にすることにし、6SN7GTと同類の6FQ7の性能曲線図(K.ameさんの実測図)にラインを引いてみます。

要は、直線性が良くなるように、すなわち、動作ラインと各バイアスラインとの交点の間隔が出来るだけ等しくなるようなラインを引ければいいのですが、そのため、1.5mAほどカソード電流をアースに流すアイドリングの下駄を見込んで、その上に最大4mA程度流す場合の5KΩのラインを引いています。  Epの低い側が少し広めですが、バイアスが−10Vでカソード・プレート間電圧が220V位が動作の中心点になる感じです。 その動作点を中心にバイアス+−10Vの変化で大よそ200V振れることになるので、スペック通りの増幅率μ=約20で、その時、アイドリングの1.5mAの上に乗せた2mAの変化で200Vの電圧変化ですから、抵抗としては大よそ100KΩ(200V÷2mA)に相当することになります。
<超三-MX(超三もどきタスキ掛けクロス)接続>

この帰還管6SN7GTBが出力管6CK4のグリッドとプレートの間に入り(P−G帰還)、上の図AのOPアンプ部分に相当する半導体のドライバ段 × 6CK4のμのオープンゲインの出力がクロスの帰還によって、帰還管μ(約20倍)のロードラインで制御されることになり、元々の6CK4に比べてかなり改善された出力特性となることが期待されます。

要するに、超三極管−MXとは、通常の超三極管接続の出力管のPーG帰還の間に増幅率の大きい半導体の差動ドライバ段を割り込ませて、(増幅段が1段加わるため、そのままでは帰還管の動作と正逆の位相が合わなくなるところを)ドライバ段と出力管の上下(正逆)を下のイメージ図のように相互にクロス接続することにより、ドライバ段と出力段を帰還ループ内に含めて一体として大きな帰還をかけるかたちです。 大きく帰還をかけたMX差動ドライブにより、出力の歪みや周波数特性の改善とともに、同相除去比(CMRR)や電源変動除去比(PSRR)によるノイズ特性やクロストーク特性の向上も期待される回路です。 ドライバ段がAC差動になっているのはドリフトを避け、出力管のバイアス調整回路を兼ねるためです。

■回路構成

出力管の動作点を上述のようにEp270V、Ip32mA(6CK4一本当たり)、バイアス約−33V。 帰還管の動作基点がEp220V、バイアス−10V、Ip3.5mA(6SN7GTB片側ユニット当たり1.5mA+2mA)の設定です。

帰還管の動作点のカソード電流はIpと同じ片側3.5mAで、下側に入る初段差動の動作点は片側2mA、差動の負荷抵抗が5KΩ=帰還管のグリッドバイアス抵抗が作るグリッド・カソード間バイアスが−10V、その時の帰還管プレート・カソード間電圧が220Vになり、電源電圧(=出力管の動作点プレート電圧270V)から帰還管のカソード電位は50V(270V−220V)になり、これが次段ドライバ段のベース電位になります。 帰還管カソード電流のうちアイドリングの1.5mAはR14・R15の33KΩを通じてアースに流れる計算です。

初段差動はデュアルFETの2SK389(J1・J2)ですが、耐圧(50V)が不足することと、ゲート過剰逆電流を抑えるためドレン・ソース間電圧(VDS)が大きくならないようにトランジスタ2SC1775A(Q1・Q2)でカスコードブートストラップにしています。 帰還管の特性のバラ付きを補正できるように負荷抵抗5KΩは4.7KΩの固定抵抗と500Ωの可変抵抗器(以下VRと略)VR4・5に別け、差動ソースの2SC1815(Q3)とTL431C(2.5Vの基準電圧IC)で構成した定電流源の電流量を可変(VR3で調整)にして帰還管6SN7GTBの動作点(=帰還管カソード電位=ドライバ段ベース電位)を調整できるように計画しています。 J1とJ2のFETのソース・ゲート間のダイオードD1、D2は電源ON時に真空がまだ通電していない状態での2SK389の保護用です。

ドライバ段は、エミッタの二本の定電流源(2SA872AのQ4、Q5と6Vツエナーダイオード、R16・17、VR6・7で構成)を無極性コンデンサで接続したhFE(直流増幅率)約500の2SA872A(Q6・Q7)のAC差動で、耐電圧の関係から同じ2SA872A(Q8・Q9)でカスコード接続にしています。 前述のようにこのAC差動のドライバ段は、DC的には差動の両定電流源の電流量をVR6・7により、それぞれのコレクター電位(=出力管のバイアス電圧)を独立して調整できる出力管のバイアス調整回路を兼ねています。

MX差動なので、先のイメージ図のようにドライバ段AC差動のそれぞれのコレクタ出力はここで上下(正・逆)を入れ代えて出力管グリッドへの接続になります。
回路図(ドライバ段のデカップリングコンデンサ等は省略しています。)

電源回路は、B電源、C電源(マイナス電源)とも、ダイオード整流とし、動作点を安定させるため、いずれもトランジスタとツエナーダイオードで定電圧化し、VR(可変抵抗器)で若干の電圧調整ができるようにしています。

B電源は、制御トランジスタをコレクタ・エミッタ間耐圧=VCEO600Vの2SC3840と同800Vの2SC3148のダーリントン接続、誤差増幅回路は耐圧を稼ぐため2SC1775Aと2SC2568(VCEO300V)のカスコード接続とし、カスコードのバイアス回路はツエナーダイオードへの電流補給ラインを兼ねています。 回路のD3〜D5は電源OFF時等にトランジスタのエミッタとベースを逆バイアスから保護するためで、一応、過電流保護回路(Q5とR9)も付けています。 また、所定電圧までの電圧降下で電力消費が大きくなるB電源のQ2とQ6は放熱器に取り付けることになります。 図には載せていませんが、電源トランスの1次側にはオン・オフスイッチとヒューズ、電源ランプが入り、スイッチにはスパークキラーを付け、トランスの1次側と2次側の端子には10Ω+0.1μFのスナバを入れています。(回路図のコンデンサの容量が標準の値になっていない個所はコンデンサを並列追加したためです。)

C電源(マイナス電源)は、基板取り付け用の30Vの小型トランスを倍電圧整流し、制御トランジスタに2SA1358、誤差増幅回路は2SA872Aで定電圧化しています。

図には入っていませんが、ヒーターはMX差動の大きな同相除去比が期待できるためAC点火とし、電源トランスの3対の6.3V端子から、左右の出力管と帰還管にそれぞれ100ΩのハムバランサVRを挟んで配線し、カソード電位が50Vになる帰還管にはハムバランサの中点にB電源から50Vのヒーターバイアスをかけています。 (結果論としては、後述のようにハムノイズはまったく聞こえないのでハムバランサは入れなくてもよかった感じです。)
B電源(メイン電源)

C電源(マイナス電源)

■主要部品

主な部品をあげておきます。 金額は大よそです。

電源トランスは二次電圧がもう少し低めのものが欲しかったのですが、適当なものがなくこれになりました。 出力管用のヒーター電流は定格一杯で余裕無しです。 出力管の6CK4GTはペア品を購入。 6CK4は全段差動に使った6AH4GTよりちょっと背が高くスマートな感じです。 帰還管の6SN7GTBは6AH4と同じサイズのずんぐり型です。 写真の6CK4はロゴマークの色合いがシルバニアの6SN7と同系統でマッチングがよかったウエスチング・ハウス社製です。

<主要部品表>
主な部品をあげておきます。 はっきり覚えていないものもあるので金額は大よそです。 トランス類と真空管、シャーシで大よそ3万円位、その他諸々を含めても4万円程度のローコストです。
部品名称 型式・規格 単価 数量 合計
電源トランス タンゴ PH-185 280V/250V/60V、DC180mA、6.3V×3 8,620 1 8,620
出力トランス ノグチ PMF-15P 15W プッシュプル用 4,000 2 8,000
C電源用トランス SEL PK-30003 30V/34mA 560 1 560
シャーシ タカチ YM-400 400W×240D×55H×1mmT 3,000 1 3,000
出力管 傍熱三極電力増幅管、6CK4GT 550V 12W、TUNG SOL 3,600 2組 7,200
帰還管 双三極電圧増幅管、6SN7GTB 450V 5W、SYLVANIA 1,700 2 3,400
ラグ型コンデンサ ラグ端子型、平滑用500V47μF、出力段バイパス用500V100μF 600 3 1,800
2SK389 デュアルFET、GRグレード 120 2 240
2SC1775A 日立NPNトランジスタ、120V、50mA 70 5 350
2SA872A 日立PNPトランジスタ、-120V、50mA 70 13 910
2SC3148 東芝NPNトランジスタ、800V、3A 300 1 300
2SC3840 日電NPNトランジスタ、600V、1A 200 2 400
2SC2568 日電NPNトランジスタ、300V、200mA 50 1 50
2SC1815 東芝NPNトランジスタ、50V、150mA 15 2 30
2SA1358 東芝PNPトランジスタ、-120V、1A 60 1 60
音量ボリューム 東京光音 2CP601 20KΩ ニ連Aタイプ 1,750 1 1,750
放熱器 50mmD×150mmW×30mmH 600 1 600

■製作

シャーシは、前回の6AH4-GT全段差動アンプで補強が大変で懲りたはずのタカチYM-400ですが、今回は補強が少なくてすむように、本来底板になる方を上にしてひっくり返して使う作戦で、サイドを幅広のアルミアングルで補強し、ヒッコリーのサイド板を当て、上面には基板の取り付けビスの頭を隠すために本来の天板を切ったカバープレートを乗せることにします。

レイアウトは、シャーシの向かって右側を電源関係に割り当て、手前に電源トランス、その背後に電源用のコンデンサ、一番後ろに放熱器を置き、残った左側は、手前に出力管、その後ろに帰還管、最後尾に出力トランス(以下OPTと略)の構成です。
シャーシの天板裏に普通に取り付けるとC電源の1,000μFのコンデンサーの頭がはみ出すので、電源部とアンプ回路部の間の天板補強アングルを利用してアルミ板の仕切りを入れ、C電源とヒーター用のハムバランサ3個はそこに取り付けます。

回路部分は、B電源、C電源、初段差動回路、ドライバ段AC差動の各部分ごとにユニバーサル基板に組み、初段のコレクタ抵抗=帰還管のバイアス抵抗と調整用VRは小さい基盤に乗せて帰還管の側に置くことにします。

初段差動の2SK389はIdssを測って5mA台の2ヶを選別し、初段とドライバ段のトランジスタもhFE(直流電圧増幅率)を揃えてペア組みしエポキシ接着剤で熱結合し、後で点検・調整がしやすいようにCRD(定電流ダイオード)やツエナーダイオード、抵抗類も全て測ってバラ付きのあるものを外して回路に組みました。

組み立ては、まず、AC配線とヒーター配線を行い、電源トランスを搭載。 B・C電源基板と電源トランジスタの放熱器取り付けを行い、電源ラインとアースラインを引き出しておきます。 次いで、出力段のバイパスコンデンサへの電源ラインとアースラインの配線やOPT、出力管ソケットへの配線を行い、 出力管ソケットのプレート端子にはプレート電流を計るための100Ωの抵抗を付けておきます。

次に、入出力端子まわりの配線を行い、シャフト延長した音量調整VRと初段の基板を取り付け、帰還管ソケットの配線とバイアス基板の取り付けを済ませます。 最後に、残ったドライバ段を取り付け、帰還管カソードからドライバ段ベースへの入力ラインとドライバ段から出力管グリッドへの出力ラインの配線を行います。 この配線は正・逆それぞれのコードの色を変えておいてクロスの配線に間違が起こりにくいようにしました。

■テストと調整

配線をチェックした上で、真空管を挿さない状態で通電テストに入ります。 帰還管カソードのバイアス抵抗=初段FET差動の負荷抵抗はVRを調整して4.7KΩの固定抵抗と合わせて5KΩちょうどにセットしておき、回路のその他の調整用VR類も計画値に合わせておきます。 ゲートのOPT二次側からのオーバーオールNFB(負帰還)の調整用VR2は無帰還のゼロΩ位置です。 ヒーター電位が無負荷で6Vちょいと低いものの、B電源、C電源とも計画値から見てすべて正常です。

次いで、入力ショートで、帰還管の6SN7GTBを挿して見ます。 ターゲットは帰還管カソード電位ですが、真空管が暖まりプレート電流が流れて所定の動作電位になるまで2分程度かかります。 ユニットのバラ付きから帰還管各カソードは同じ電位にはならないので、安定した段階で左右それぞれの球の電位の高い方のユニットのカソード電位が所定の50Vになるように初段差動の電流量をVR3で仮調整します。 低い方のユニットはカソードのバイアス抵抗の調整VR(VR4もしくはVR5)でカソード電位を同レベルに仮調整します。 球のバラ付きで帰還管のカソード電位が段違いになること自体は回路動作上は特に問題ではなく、ざっと合わせておきます。 続いて、出力管ソケットのグリッド端子の電位=ドライバ段の出力電位を所定の−33V付近になるように、ドライバ段AC差動のそれぞれの定電流源のVR6、VR7で仮調整しておきます。

最後に、出力端子に8Ωのダミー抵抗を繋いで、出力管6CK4を挿します。 出力管のプレート電流が流れ過ぎていないことを各出力管プレートに付けた100Ωの抵抗の電位を当たっていずれも異常の無いことを確認します。 電源回路のVRでB電源出力管プレート電圧を所定の270Vに、C電源を−66Vに調整した上で、改めて各帰還管カソードの電位を再調整します。 若干ドリフトがでますが、初段定電流源のVRで先に合わせておいた電位の高い側のユニットのカソードを50Vに再調整し、もう一方のユニットのカソードをバイアス抵抗のVR4もしくは5で同電位にします。 次いで、出力管プレートの100Ωの両端電位差からプレート電流が32mA(100Ω抵抗の電位差が3.2V)になるようにドライバ段AC差動(=DC的には出力管バイアス調整回路)の定電流源の電流量をVR6・7で調整します。

プレート電圧270V、帰還管カソードを50V、出力管プレート電流32mAに合わせた時の6SN7GTBの動作点バイアス(グリッド・カソード間電圧)は想定の−10Vよりやや小さい約−9Vで初段差動の電流量は計画の2mAより少ないバランスで、バイアスは想定の−33Vに対して−31V前後とやや低めです。
調整が無事終わったので、出力管プレートの電流計測用の100Ωの抵抗を外しプレート配線を繋ぎ直して、CDプレイヤーとスピーカーを繋いでみます。

緊張の一瞬ですが、電源ON! う〜む、ヒーターのハムバランサは中点のままですが、耳を近づけてもノイズはまったく聞こえません。
ボリュームを回すと・・・、おおっ! 音がちゃんと出ます。(^o^)/

初段差動特性を整えるためのオーバーオールの負帰還量調整用のVR2を回してみても発振しません。 う〜ん、意外とすんなりです。
#実は、後で、オーバーオールNFBの帰還量を決める調整をしようとしたら片チャンネルのVRを回せば回すほど音が大きくなり正帰還になっていました。 正帰還になると即発振するもんだと思っていたのですが、すぐ発振するとは限らないのね。(^^;
ということで、正帰還になっている側のOPTの出力管へのプレート配線を入れ替えて繋ぎ直します。

これで、「超三結−MX簡単化バージョン」実機第1号(たぶん)の製作は一応完成です! ぱちぱち。(^o^)


追記;

#半導体を使って大きく帰還をかけた回路なので一抹の不安がありましたが、作ってみたところ非常に安定した回路でした。
#出力管プレートの100Ωの抵抗を調整のたびに付けたり・外したりするのも面倒なので、各カソードに5.6Ωの抵抗を入れてそれで調整するように変更しました。

■試聴結果

さて、オーバーオールの負帰還をかけた状態で、いよいよ試聴です。

6CK4のキャラクターか中域の厚い感じはあまり強くなく、高域もナチュラルで、帯域フラットな感じです。

叩く音や弾く音のアタック感はツイン・モノラルの6AH4全段差動の方がどちらかと言うとシャープな感じですが、この6CK4超三MXも低域は遜色ない感じで、一種の静寂感みたいなものを感じさせるところがあります。 また、全段差動より音の出方がやや広角ですが、音場の広がりがステレオ感とスケール感にプラスになっている感じで、楽器編成の多いものや録音に音響効果を積極的に使ったもの、逆に、軽い感じやソフトな曲などもいい感じで聴け、トータルな特性が評価できるように思います。(^o^)

■6AH4-GTとの差し替え

出力管を6AH4-GTと差し替えて試してみることにします。 (ピンNo.3が、6AH4ではNCピン(ノン・コネクト)に、6CK4では放熱用のもう一つのグリッドピンになっていますが、共通のピンNo.1のグリッドのみを使用し、ピンNo.3は何も接続しないNCです。)

プレート電圧は同じ270Vで、バイアス−26V位、プレート電流22mA程度を動作点にした設定です。 ドライバ段のC(マイナス)電源を61Vに下げ、ドライバ段=バイアス調整回路の定電流源のVR6・7を回してコレクタ電位=出力管バイアスを−26Vに合わせておきます。
最初は全段差動に挿していたGEの6AH4を挿してみましたが、一本だけバイアス調整範囲内ではうまく合わないため、SILVANIAの6AH4に替え、それぞれのバイアスを再調整し、カソードの5.6Ωの抵抗の両端電位でIPを想定の22mAに合わせます。

さて、6AH4に替えての試聴です。 音を出してみると、中域がやや太い感じで、音が前にでる感じもやや強くなり、どちらかと言うと真空管アンプらしい感じが強まります。 高域もスカッとした感じで、いい感じです。
最後になりましたが、
回路を参考にさせていただいた上に、いろいろお教えいただいた、”かつさん”に感謝いたします。m(_)m

また、UTiCdさんの掲示板、一庵さんの掲示板でアドバイスをいただいた皆様方に、
改めてお礼申し上げます。m(_)m

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