MOS-FET 終段 NO-NFB 0dB モノラルパワーアンプ

MOS-FET No-NFB 0dB Monoral Power Amplifier (May/1999)

目次

はじめに
製作対象
製作方針
主要部品
バラック試作
本チャン製作
視聴結果
おわりに

はじめて作ったアンプです。

■はじめに;

最初はスピーカーの自作を始めたのですが、スピーカーネットワーク用の部品を買いに行ったお店に電子工作キットの売場があり、そこにオーディオアンプの工作キットというものがあるのを見つけて、電気知識が小学生レベルの私には、こういう子供も対象にしたようなキットから始めるのが適しているかもしれないと思って買って帰りました。

早速作ってみましたが、アンプ本体はICのワンパッケージで、付属の回路図に従って抵抗やコンデンサとともに基盤に突き刺してハンダ付けするだけで、アンプの実体が何もわからない、「ただ作った」だけという感じでした。

このあたりのことを、ある掲示板に書きましたところ、「本格的なアンプで比較的簡単に自作できるものがある」ということで、UTiCdさんから紹介していただいたのがこのアンプです。

増幅度1倍(0dB)、すなわち増幅なしのMOS-FETの出力段だけの極めてシンプルな、CDプレイヤー直結を前提にしたアンプです。

■製作対象;

このアンプのオリジナル回路は、窪田登司さん著の「半導体アンプ製作技法」という誠文堂新光社発行の本の巻末に製作事例として掲載されているもので、本編が自作アンプのガイドブック的構成になっているという親切なものです。

教えていただいたのは、オリジナル回路ではパラレル接続になっている出力段をシングルにし、アイドリング電流を小さくするなどの簡略化を行えば、作りやすくなるし、しかもローコスト化できるということでした。

回路は初めての私が見ても「本当にこれでいいの?」というほどシンプルな回路です。
本の回路をそのまま載せるのは具合が悪そうなので、図はパラレルになっている部分をシングルにした片チャンネル分の基本回路を示します。 バイアス回路のR1とR4の値を固定抵抗と可変抵抗に別け、その可変抵抗器で出力の0V(オフセット)調整するようになっています。

「これなら何とかなりそう・・・」ということで本編のガイドブックにあたる部分を読み始めましたが、実際に作った経験どころか、FETなどの素子の実物を見たことすらないので、実感が沸かない状態でしたが、とにかくやってみれば本に書いてあることも実感を持って理解できるかもしれないと思って取りかかることにしました。

■製作方針;

とにかくやってみるということで、まずは片チャンネルだけ試しに作ってみることにし(バラックと言うらしい)、その後で本チャンバージョンを作るという二段階のステップを取ることにしました。
1.窪田さんの本の回路を見本にし、パラレル接続でなくシングルにし簡略化する。

2.シャーシ無しで片側だけバラックで作り、動作を確認してから本チャンを作る。

3.高額部品は汎用品を使用し、シャーシは自作してコストダウンする。

4.モノラルにして同じものを2台作成して製作に慣れる。

■主要部品;

コストダウンの一つは電源にDCコンバータを使うということでしたが、電源も含めて作ってみることにし、本に載っているトランスや大容量の平滑コンデンサなどの高額部品は汎用品にグレードダウンしました。

詳しい値段などはほとんど忘れてしまったのですが、トランスは菅野の100V/24-0-24V/0.5Aで三千円位、試作段階の放熱器が6百円ほど、MOS-FETのK1056/J160のコンプリメンタリーペアが千数百円、電源の平滑用コンデンサが1本三百円台だったような覚えがあります。

■バラック試作;

本チャン前の試作は、ベニヤ板で底板と前後のパネル板を組み、トランスや入出力の端子類、電源スイッチ、ヒューズ、パイロットランプなどを取り付け、素子を付けた放熱器をネジ止めし、穴開き基盤に仮組みした電源回路とバイアス回路を乗せて配線しました。

スイッチオンは緊張の一瞬でしたが、火花が飛ぶことも、煙が上がることもなく、電源ランプが灯りました。

再点検して、アイドリング電流と出力の中点電位を調整した後スピーカーに繋ぎました。 わずかにオフセットがでていましたが、「まあ、いいか・・・」です。 耳を近づけるとブーンというノイズが少しでていますが、それほど大きくもないのでCDから音を入れてみました。

ちゃんと音が出ました! それも、思った以上にいい音です。感動ものです。
これは本チャンを作る価値があると確信しました。

■本チャン製作;

仕入れたトランスなどを無駄にせず本チャンバージョンでも部品を流用できるようにということと、モノラルのパワーアンプなんてカッコいいじゃんという俗な考えに加えて、経験の無い私としては、同じモノを二つ作る方が製作体験を積めるように思ったので、モノラルタイプにして2台作ることにしました。

この段階で、放熱器をシャーシのサイドに立てれる一回り大きい縦型ものに換え(1ヶ8百円位)、平滑コンデンサの段数を増やしたのと、バイパスコンデンサや入出力端子、抵抗などの小物部品類をオーディオ系の部品屋さんで購入したものに変更しました。

シャーシは、スピーカー工作の要領でアルミ板と合板で自作することにして、前後パネルをアルミ板で、サイドは中央に放熱器を立て、その両側を合板にしました。 スピーカー工作同様、ここでも、どんなのを作るか構想を練る段階が楽しみの一つであると感じました。
パワー電源;


■視聴結果;

試作段階よりもアイドリング電流を増やして200mA程度に調整してスピーカーに繋いでみました。

やはり、わずかにハムノイズがでましたが、音はなかなか良い感じで、増幅度1倍のアンプですがパーソナルに聞くには不足の無い音量が得られます。(ハムノイズは後日、アース配線を張りなおしたらまったく聞えなくなりました。)

■おわりに;

ということで、色々と教えていただきながらですが、何とか作り上げることができ、しかも気に入った音が出たので、初めてにしては大成功だと思います。

本の部品リストを一応参考にしましたが、電源関係も含めて実際に自分で部品を選定し、シャーシも自作したので、思った以上に色々な面で勉強になりました。
本の回路や製作例を参考にするにしてもその通りに作らなくてもかまわないということと、回路や部品を変更して自分流に作り変えることが色々な意味でそのままコピーするよりも勉強になるし、コスト的な自由度も得られることがわかったのが大きいです。

また、一応出来た後も、小型トランスを加えてバイアス回路を定電圧化し独立させたり、バイアス回路の抵抗値を大きくしてコンデンサーでバイパスして入力抵抗を高めたり、アースを張りなおしたりの改造を通じて、プラスαの経験も得ることもできました。

それと、この窪田さんのアンプは、シンプルで作りやすいということに加えて、コンセプトのはっきりした設計がすばらしいと感じました。
そのうち、再アレンジして作りなおしてみたい気がしています。

最後になりましたが、何もわからなかった私に丁寧に教えてくださったUTiCdさんに改めてお礼申し上げます。